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2004年12月08日
第十三回 エッセイ 「名人芸」
夏祭り。
皆様も沢山の楽しい思い出があるのでは無いでしょうか?
毎年近所のお寺で行われる夏祭りは、子供の頃の僕の最大の楽しみの一つで、
祭りと聞いただけで、散歩の時間を体内時計で感知し、
小屋の中で居ても立っても居られなく
飼い犬みたいになったものです
色とりどりに並ぶ、最新のアニメ、
もしくはヒーロー物の仮面を売るお店では、
毎年、3日で耳のゴムを繋ぐ部分が壊れると判ってるのに迷わず購入し
、薄暗い夏の夜にも関わらず即装着!
今なお、かすかに記憶が残ってるのだが、
仮面を被るとすぐに仮面内が蒸れ、真新しいセルロイドのような匂いがした。
仮面を着けると急に視野が狭くなり、歩くスピードが、
初めて二足歩行を試みた猿人のように、
大幅に減速してたのも覚えてる。
中にはピンク色のひよこを売ってる店なども有った。
僕はこのピンクのひよこを購入したことが無いのだが、
購入した友達の家では、1年後、
ただのニワトリになった。
数ある祭りの出店の中で忘れてはならないのが、「金魚すくい」で、
誰でも一度はやった事があるのではないでしょうか 。
僕は意外とこれが得意で、いつも10匹以上すくい、2−3匹は持ち帰ってた。
あの日も、本日の魚場を決めるべく、
幾つか出てた金魚すくいの出店を見て回ってた。
そして一軒の出店が僕の目を釘付けにした。
僕の目を引きつけたのはその店の金魚では無く、
その出店のいけすで泳ぐ、数百匹の金魚の中に居た、
一匹の「巨大なフナ」である。
体長30センチはあろうそのフナは、
回りの金魚と比べると鯨に見えた。
灰色の巨体で優雅に泳ぐその姿は
「俺を捕まえれると思うのなら捕まえてみろ!」と
無言のアピールしてる
「幻の大イワナ滝太郎(釣りキチ三平参考)」のようにも見えた。
「本日の漁場はここだ!」。
僕は、お金は払い、網を購入すると、
捕獲した金魚を入れる小さなお椀形の容器に水を入れ、
しばらくその場に腰をおろして回りの釣り人を観察してた。
皆やはりそのフナが気になるようで、金魚をすくおうとしてるのに、
その巨大なフナが近づいてきて、慌てて網を水から出し、
破ってしまう者などが続発してた。
何匹かの金魚をすくい、網が半分以上破れると、
「おりゃーーーーーっ」と、やけくそにその巨大魚を追いまわす者も居たが、
そのフナが逃げる時にものすごい水流が生まれ、
周りにですくってた人たちの網が破れるだけで、
その度に店の親父の眼光に「してやったり」という
メッセージを確認出来た。
しばらくして、僕も網を水につけ、動きの遅い、小さな金魚を狙い始めた。
数を稼ぐためには、なるべく網にかかる負担を軽くしないとイケナイ。
これは僕が長年の金魚すくい経験から培ったサクセスへのシナリオだった。
5匹位すくった時点でなにげに顔を上げると、
僕の真向かいですくってたオヤジが目に止まった。
そのオヤジは、すでに完全に破れた網を片手に、水面を静かに眺めていた。
<通常網が破れると、すぐ破れた網をお店の人に渡し、
取った金魚の中から数匹の金魚を袋に入れて貰うので、
網が破れたのに、まだ戦意喪失からほど遠いオヤジのこの行動を
僕は無視する事が出来なかった。
オヤジの目に「ギブアップ」の文字が見えないのだ!
それどころか一度ダウンを奪われ、
闘争心にさらに火がついたファイターの目だったのだ
しばらく観察してると、オヤジの目は明らかにフナを追ってる事に気がついた。
息を殺し、草場の陰で獲物が来るのをじっと辛抱強く待つ
ライオンのようだった。
そしてそのフナがオヤジの目の前を優雅に泳いだ瞬間、
すでに紙は破れ、骨組みだけになったその網を
オヤジは静かに水面下に沈めた。
水中輪くぐりのようにセットされたその網の中を、
その巨大フナが通過した瞬間、
「おーっしゃーーーーー!」というかけ声と共に
オヤジは勢い良く網を垂直に水面へ引き上げた!
オヤジのミラクルトリックにより、空中へ跳ね上げれら、
暴れるフナがまき散らす水しぶきが、回りに居た全員にかかった。
オヤジは勢い良く、腕を伸ばせるだけ伸ばす事により、
フナを水面から1メートルちかく出すことに成功し、
落下してくるフナをもう一つの手に用意してたお椀で
見事にキャッチ!
もちろんフナの巨体はその小さなお椀には収まらない。
入ってるのは「C」の字に曲げられたボディーの中心部のみ!
オヤジは今度はその骨組みだけの網を鍋の押さえ蓋のようにし、
フナをサンドイッチ状態にすると、あっけに取られてる回りの連中をよそに、
「取ったーーーーーー!!! わっははははっは、おい、早ようこれ、
袋にいれてくれーや、早よせーーー!」と店のオヤジに激しく催促。
この間もフナは、ハワイ沖で松方弘樹と梅宮達也に釣り上げられた
マヒマヒのように大暴れ!
店のオヤジもまさか自分が
スティンガーとして仕込んでおいた
フナが釣られるとは思ってなかったようで、
入れる袋を用意してなかったのです。
それを見ていた、暴れるフナをお椀と網で挟んでたオヤジは
「おし、じゃこれからうちに帰ってバケツ持ってくるけーのー、
いっぺん戻すで」とフナをいけすに戻し、 その場を立ち去りました。
その後オヤジが戻って来て、フナを持って帰ったのかは、
僕もしばらくしてそこを後にしたので判りません。
ただオヤジのフナ釣りのお陰で、いけすの回りに居た全員がびしょ濡れになり、
ファイトの時失ったフナのウロコが数枚、
いけすに中でちょうちんの灯りを受け、
キラキラと揺れていたのが夏の想い出として
僕の記憶に 残りました
投稿者 morty : 2004年12月08日 11:25
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