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2004年12月08日
第十二回 エッセイ 「夢が現実に」
このエッセイは、「プレゼント」というエッセイの続編です、内容は同じく僕が音楽に打ち込んでた時代を題材にした物で、
全てノンフィクションです。
過去に掲示板へ少しずつ書き込んでた自身の音楽活動を題材にし
たエッセイの総決算と言っても良いと思います。
このエッセイを楽しまれた方は、是非、掲示板の過去ログに掲載されてる、
僕がここに来るまでの過程を書いたエッセイなどを読んで頂ければと思います
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MR.BIGとのツアーで、エリックから素晴らしいプレゼントを貰った僕は、
MR.BIGのツアー終了後も、自分のバンド「D」での活動を精力的に行いながら、
引き続き家賃などを支払うため、掛け持ちでフリーの通訳としても働き続けました。
様々なアーティストのジャパンツアーに同行し、
間近でトップアーティストを見れたこの期間は、
後の自分の音楽のキャリアに、大きなプラスになりました。
それから約2年後
僕は自身の在籍するバンド「D」が成熟した確信し、勝負に出ました。
先ずはメンバー3人でお金を出し合い、デモテープを制作する事にしました。
当時、僕も、残りのメンバーもバイトをしてたので、
何十万もかかるデモテープ制作は、レコーディングにかかるお金全てを
3人で負担しないとイケナイので、決して楽な決断ではありませんでした。
「D」では過去に2度ほど、デモテープを取りましたが、
今回はバンドの幅などを見せるためにバラードを入れる事になり、
バンドのドラマー「S」の友人にピアノプレイヤーが居たので、
その人に頼んで、僕がギターで作った曲をピアノにおこして貰い、
実際のレコーディングでもピアノを弾いて頂きました。
お金の無かった僕たちには、
ピアノを弾いてくれた彼に払えるギャラなどは無く、
みんなでお金を出し合い、彼に焼き肉をご馳走するのが精一杯でした。
1週間近くかかり完成したその3曲入りのデモテープを、
僕は4年間通訳として働いてた間に知り会った
全てのレコード会社の人達に配って回りました。
そして、、、
数社のレコード会社と、事務所がバンドに興味を持ってくれたのです。
僕達は、バンドに興味を持ってくれたレコード会社、事務所を招待し
、数ヶ月後にプレゼンテーションライブを行い、これに全てを賭けることにしました。
この時点で「D」はインディーズの世界ではある程度の名前は有りましたが
流行のロックとはかけ離れた、ブルースを基盤にしたロックを演奏しており、
決して売れ線の音楽をやってたとは言えませんでした。
バンドの活動は月2−3回のライブ活動が中心でしたが、
ライブハウスのノルマ(一つのバンドに課せられる最低のチケットセールス)で 有る
30枚をクリア出来てる程度でした。
そして運命の日が来ました。
当時まだアマチュアバンドだった「D」には、
レコード会社と言えども、ゲストとして、
無料でライブを見せる事をライブハウスは許してくれず、
メンバー3人でお金を出し合い、招待者分はバンドが自腹を切りました。
ライブ当日、お客さんが少ないと見た目が良くないので、
メンバー全員、連日連夜、知ってる限りの!友達や知り合いに電話をし、
当日のライブを見に来てくれるようにお願いしました。
この時の僕らは間違いなく、一つの土産を売るため、
全ての指の指紋がすり切れて無くなるほどの
激しい手もみを繰り返す、
浪速のあきんど(商人)でした!
そしてそれらの努力が実り、当日は100人近くが集まりました。
本番前、僕は自分でも驚くほど落ち着いており、
実際のライブでも、最高のパフォーマンスが出来ました。
バンドのみんなも、小さなミスなどはありましたが、
満足の出来るライブだったようで、
ライブ終了後は、みんなで近くの居酒屋で乾杯しました。
レコード会社の人たちは僕たちが片付けをしてる間に帰ったようですが、
友達から、「良いライブだったと言ってたよ」と聞かされました。
そして数日後、、、、、
一件のレコード会社から電話が有りました。
「話があるので、明日会社へ来てくれないか」という内容でした。
アマチュアバンドだった「D」には当然マネージャーなどはおらず、
事務的な事はみんなで手分けしており、
当日は残りの2人のメンバーがバイトを休めないので
代表で僕が一人で行くことになりました
(このころ不規則なフリーの通訳で働いてたのは僕だけで、
残りの二人のメンバーは普通のバイトをしてました)
これまでにも以前在籍したバンド「R」でレコード会社の人と話したり
「D」でも事務所との話し合いをしたことはありましたが、
手応えの有ったライブの後だったので、
「15歳の時から見続けて来た夢がいよいよ叶うのか、、、」と
その日はなかなか寝つけませんでした。
翌日、僕は身なりをいつもより気にかけ、地下鉄に乗り
、少し早めにレコード会社の近辺に着くと、地下鉄構内のトイレに入り、
自分の身なりなどを再確認し、少し気持ちを落ち着けてから、
レコード会社の門をくぐりました。
この時は少しドキドキしていましたが、
今考えると、ある程度の自信もあったので
、不安な気持ちはあまり無かったように思えます。
受付で担当者の名前を告げると、しばらくしてディレクターの「N」
(注:掲示板過去ログ「N君に捧げるセレナーデ」参考)が現れ、
「元気!すぐ部長を呼んでくるからこっちで待ってて」と
50席以上有る大きな会議室のような所へ案内されました。
その大きな会議室で一人で待つこと5分、「N」と制作課の部長が現れました。
部長は席に着くと、「この前のライブは楽しめたよ」と前置きを言った後、
「現在当社に、某映画会社から、現在制作してる映画の
主題歌を歌うアーティストは居ないか?と話が来てる。
君たちのデモテープをその映画の監督、そして主演俳優に聞かせたら
とても気に入ってたので、その主題歌を君たちにやって貰おうと思ってるのだが、、、」
自分の耳を疑いました、、、、
これは「うちからデビューさせる」と言うことじゃないか!
この言葉を聞いた瞬間は、僕が「それまで」生きてきた
人生の中で最高の瞬間だった。
自分が15歳から信じてた夢がいよいよ叶うんだ!
その後も色々映画の事や今後の事を説明されたが、
契約を取れる! プロのアーティストに自分が成れるんだ!という気持ちが
自分の全てを制覇し、「来週その映画の監督と主演俳優との
ミーティングが有るので出席して欲しい」という部分しか理解出来ませんでした。
「本当にデビュー出来るんだ」。
会社を出てから僕は、地下鉄構内の公衆電話から残りのメンバーに電話をして、
この素晴らしいニュースを知らせようと思いましたが、その時点でまだ午後2時
。彼等はまだバイト中の為、家に着いてからゆっくり話そうと、
早く言いたい気持ちを我慢して、電車に乗り、家へと帰りました。
興奮覚めやらぬまま、家に帰ると留守番電話のメッセージランプが点滅中。
早くみんなに電話したい気持ちを抑えつつ、メッセージ再生ボタンを押すと、
信じられないメッセージがプレイバックされました!!
「こんにちは、私は国選弁護人の「A」と申します。
あなたのお友達の「S」さんが現在某留置所にて拘留されており、
あなたとの面会を希望しています。
私の電話番号はXXX-XXXXで面会時間は、、、、、」
レコード会社を出てから家に着くまで、
僕はずーっと軽い笑みを浮かべてた思う。
いよいよ自分の夢が叶うのだから当然だろう。
その笑顔のまま、このメッセージを聞き、
変化する自分の顔を誰かに撮影してて欲しかった、
一生の記念になったと思うから。
留守電に残されてた番号に電話すると、
メッセージを残してくれた国選弁護人の方が出られ、
「S」が昨日の夜中、酔った勢いでどこかのショーウィンドーを破壊したのだが、
彼がそれを一切覚えておらず、行為を認めないので
拘束されてるのだと説明してくれました。
美味しいぞ「S」!
こんな武勇伝をデビュー土産にするとは
お前もプロの芸人よのぉーーー!
ショーウィンドーを壊されたお店には申し訳ないが、
この話が面白いのは、「S」が普段は虫も殺せないような奴だからなのだ!
「酒は呑んでも呑まれるな」という名言があるが、
ここまで呑まれればこれは一つのアートフォームだと思う。
サザビーズでピカソやゴッホなどと肩を並べ、
オークションに出せる芸術作品だ!
フニャフニャのイモムシが、
最後には黒く光り輝く鎧を持ち、
早朝のクヌギの木で昆虫界のゴッドファーザーである
「スズメ蜂」を蹴散しながら。一人クヌギ汁を吸う
カブトムシに成るくらいのハードな変身を成し遂げた「S」には、
白鳩を飛ばし、心からの拍手と
スタンディングオベーションを送りたい。
国選弁護人の人に面会時間などを聞いた後、
僕は一度電話を切り、「D」最後のメンバーで、
ボーカルとベースを担当する「H」に連絡を入れた。
最初にデビューの話をした時は、彼も本当にエキサイトしてたし、喜んでた。
そして「 S 」の現状も話すと、「エーーウソだろう!あいつが??」と
信じられない様子だった。
とりあえず「S」の事はレコード会社には黙ってたほうが良いだろう、
それからミーティングで
「すいません、ドラマーは今くさい飯食ってますので
来れませんでした」なんて
口が裂けても言えないので、今度のミーティングも、
僕一人で行った方が良いかもという事で合意し、電話を切りました。
それから数日後、再びレコード会社へ、
映画監督とのミーティングに参加する為、僕は地下鉄に乗っていました。
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「S」の名誉の為、最後にもう一度書いておきますが、
彼は本当に虫も殺せないような男なのです。
彼は本当に自分がそんな事をした記憶がなく、
警察で一方的に「お前がやった、目撃者がいるので、認めろ!」と言われ、
自分にその記憶が有るのならその場で認め、謝罪するつもりだったそうですが、
本当に記憶が無く、それなのに認めてよいものか判らず、
行為を認めずにいたら、拘留されたそうです。
ちなみにのその後ですが、「S」のバイト先の社長さんが、
壊したウィンドー代を払ってくれ、「S」は3日後にシャバに出ました。
もちろん給料てんびき。
投稿者 morty : 2004年12月08日 11:23