以前エッセイ「デビュー」にも書きましたが、僕がバンドでデビューした日は「MR.BIG」というアメリカのロックバンドと一緒に、渋谷のタワーレコードでのイベントに参加しました。
そのイベントに来てた客の99%は「MR BIG」を目当てに来てたはず。前座で出た僕達の演奏を真剣に聞いてる人は数十人だったと思う。
この日、僕の真ん前に一人の男の人が居た。「MR BIG」をまじかで観たいが為に朝早くから並んだのか、ステージの真ん前、最前列に彼は居た。
僕達が演奏を初めると、初めて聴く曲なのに楽しそうな笑顔で声援してくれた。彼とは数ヶ月後偶然別のコンサート会場で再会し、交流が始まった。
彼の名前は「ヒロト君」で、僕より2歳年上。職業は歯医者さんなのだが、ロックが大好きで高校生の頃から大学時代はずっとバンドでギターを弾いてた。同じギタリストに影響を受け、ギターを始めた僕達はすぐに仲良くなり、連絡を取り合うようになったのが今から約10年前。
東京で僕がやったライブはもちろん、僕のバンドが大阪や京都へツアーした時も、東京からわざわざ見に来てくれたし、バンドを解散してからも僕の音楽を真剣に応援してくれた。
2000年、僕が日本を出る時、友人3人とお金を出し合い、僕にギターをプレゼントしてくれた。もちろんそのギターは今も家にあります。
その後、2001年に嫁と入籍する為に僕が日本に帰った時は、健康保険の無い僕に無料で「歯」の治療をしてくれた。治療の後、食事に行ったのだが、その時、のちにヒロト君が結婚したフィアンセにも紹介してくれた。その時フィアンセさんに「いつも彼はあなたの話をしています」と言われました。
3年前、僕が日本に仕事で帰った時、空港まで送ってくれたのもヒロト君。嫁が今年4月に日本に帰った時は自分の3歳の息子を連れて、嫁の実家まで来てくれた。自分の息子と僕の息子、両方を膝の上に乗せて喜んでる彼を捉えた写真はとても綺麗です。
昨日の夜、メールを取り込むと、ヒロト君からのメールを見つけた。開いて見ると、ヒロト君からでは無く、ヒロト君と離婚した奥さんからで「ヒロトが今朝、亡くなりました」と書いてあった。
信じられませんでした。
すぐにヒロト君の携帯電話に電話すると奥さんが電話に出られたので、「どのように亡くなったのですか?」と聞いてみた所、「朝トイレに行こうとして死んだらしいのですが、まだ詳しくは判りません、脳内出血の可能性が高いみたいです」と聞かされた。
癌宣告され、余命2ヶ月と言われれば、病魔と戦いながら死ぬ為苦しさは地獄だと思うが、家族、友達に伝えておきたい事を伝える時間はある。ヒロト君のように何も兆候が無く、いきなり命が途絶えた場合はそれすら出来ない。彼は奥さん、息子、友達に沢山の事を言い残したように気がする。せめて、彼に最後のメッセージを伝える時間が与えられてたら、彼は誰にどのようなメッセージを残しただろうか。
もし、僕が今日余命2ヶ月と言われたら、家族や友達に心からの「ありがとう」を言いたい。息子に関しては成長を見届けれないので、息子の成長を想像し、10歳の時はこの手紙を、思春期の15歳にはこの手紙を、人生を歩み始めた20歳の時にはこの手紙をと、息子の成長を想像しながら、自分なりのアドバイスを書き入れた手紙を作り、嫁にそれぞれの年齢になったら渡してもらうと思う。
それすら許されなかったヒロト君。
カスみたいな人間がのうのうと80過ぎまで生きてるのに、こんな良い奴がこんなに早く亡くなるとは、人生は本当に不公平です。
昨日の夜、花を送ろうと、嫁がヒロト君の実家に電話したのですが、その際お母さんが電話口に出られ、「海外に住んでる主人がお世話になった者です、、」と言っただけでお母さんは僕の名前を口にし、「ヒロトがいつも彼の事を話していました」と言われた。
そして今日、葬式の日取りが判らず、ゴッタ返す実家に電話するのは申し訳ないと思い、嫁がヒロト君の勤めてた歯科医に電話し、「アメリカに住んでおります、、」と言っただけで、応対に出た看護婦さんは僕の名前を出し「いつも先生は彼の事を話していました」と言われた。
こんなに愛されてた僕は、彼の為に何をしてあげれただろうか。人に好いて貰う素晴らしさに身を委ね、自分は何もして無かったような気がする
ヒロト君が居なくなった今、彼が自分に取ってどれだけ大事な人間だったのかが判ったような気がする。
だけどもう遅い。自分の情けなさに嫌気がさす。もっともっと彼を大事にしてあげるべきだった。
ヒロト君、出来れば今すぐにでも会いたいです。会って色々話したいです。
「いつか子連れで飲みに行こうよ。俺たちはロックンローラーだから酒は20歳までなんて事はないよね。息子が15歳位になったらもう飲ましても良いんじゃないの?」と語ってた夢はもう叶う事は有りません。
この会話があった同時期、様々な行動や考え方から、もしかして自分も年を喰い、攻めのスタンスを知らず知らずに失ったジジイになったのかなと思い、ヒロト君に話してみたら、「それでいいんだよ、これから俺たちは不良中年だよ」とヒロト君に言われ、「なるほど、そういう道に進めばいいんだ」と納得した事も有りました。
先週解任された現場に今日一日だけ戻ったのですが、運転しててもヒロト君の事ばかりを考えてました。奥さんの話から突然フッと死んだような印象を受け、点いてるテレビの電源を抜くように、パッと消えたのかな、、、、。自分が死ぬ事が理解出来たのかな、、、。
運転中ラジオから好きでもないU2の「WITH OR WITHOUT YOU」が流れ、ただただ悲しくなった。
ヒロト君、もう会えないけど、出来れば今すぐにでも会いたいです
I LOVE YOU
MORTY
